読書の庭

占い師の読書記録。

あん

桜の季節になると読みたくなる本。

 

この本を知ったきっかけは映画から

 

日本アカデミー賞樹木希林さんが主演女優賞にノミネートされ
授賞式で割烹着姿で登壇された姿が印象に残っており
映画を観てみるとなんでもない日常にも
幸せが溢れていると気づかされた

 

その直後、偶然にも古本屋さんでこの本と出会い、手にする事に。

 

【あらすじ】

シャッターの目立つ商店街で
ひっそりと営業をしているどら焼き屋

ある日、一人の老女が手作りの”あん”を持参し
ここで働きたいと申し出る。

訳あり者の店主と
訳あり風の老女

店主は戸惑いつつも彼女の”あん”を使ってみると
売上が伸び始める

このまま順調にいくと思っていたところに
老女の事情がお客にバレてしまう・・・

 

 

p.165

この世にあるもの全ては言葉を持っていると
私は信じています。
どんなものでも商店街を通る人たちはもちろんのこと
生きているものなら、いえ、陽射しや風に対してでさえ、
耳を澄ますことができるのではないかと思うのです。

 

p.195
つらいことばかりでした。
もちろん、そういう言い方もできるかもしれません。
でも、この場所での歳月が過ぎていくなかで、
私には見えてくるものがありました。…

闇の底でもがき続けるような
勝ち目のない闘いのなかで、私たちは人間であること、
ただこの一点にしがみつき、
誇りを持とうとしたのです。

 

p.235
私だけではなく、もし人間がいなかったらどうだったか。
人間だけではなく、およそものを感じることができる
あらゆる命がこの世にいなかったらどうだったか。
無限にも等しいこの世は、すべて消えてしまう事になります。…

でも、この考え方が私を変えたのです。
私たちはこの世を観るために、
聞くために生まれてきた。
この世はただそれだけを望んでいた。
だとすれば、教師になれずとも、
勤め人になれずとも、
この世に生まれてきた意味はある。

 

p.238
ハンセン病におかされた者だけではなく、
きっと誰もが、自分には生きる意味があるのだろうかと
考える時があるかと思います。…

だからといって目の前の問題が解決されるわけではなく、
生きていくことは苦しみの連続だと感じられる時もあります。

…だけど、その喜びは苦しみと背中合わせでした。

 

 

この映画や本に出会うまで

ハンセン病という名前は聞いたことがあったものの

詳しいことはよくわかっていなかった。

 

病気になるだけでも辛いことなのに

隔離生活まで強いられるとは…

 

そんな中でも生きる意味を見つけ出せる

徳江さんの生き方にはグッとくるものがあった。

 

 

この本を読んだ直後

たまたま観ていた報道番組で

この映画の特集があり

その中で、徳江さんのモデルとなった女性がいたことを知る。

 

 

今世では自らの意思とは関係のないことで

虐げられてきた人たち

 

来世では絶対に幸せになってほしいなと願いながら

 

桜の下でどら焼きを食べたくなる。

 

 

また、桜の季節になったら読み返そうと思う一冊です。